まえがき
以下に目次を載せますが、これまでの記事を読んで頂ければ、ドリフトの仕組みについては一通り理解して頂けたかと思います。次は、いよいよどうしたらそれができるようになるか、その練習法についてです。これは実際に私が練習した方法で、非常に安全な方法、というよりそもそも大きな事故を起こしようがない方法です。それをご紹介したいと思います。
(2)アンダーステア、オーバーステアとは
(3)ドリフトの種類 — ブレーキングドリフトとパワードリフトについて
(4)ドリフトの話題①・・・タイヤの摩擦円とは
(5)ドリフトの話題②・・・LSDとは
(6)ドリフトの練習法
本文
1)必要なもの
まず車です。ここまでの説明を読んで頂いた方は、FR、LSD付きの車が必要だということは理解して頂いたと思います。そこでひょっとしたら下の写真のようなイメージを思い浮かべるかもしれません。
いえいえ、これはまだちょっと早いです。こういう限界の高い車を扱うのは、オーバーステアになったときの車の挙動を覚えてからにしましょう。
例えば太くてハイグリップのタイヤを履くと、パワーをかけて空転させるのに大きなエンジンパワーが必要になります。また、コーナリングのスピードも上げる必要が出てきます。これは危険なだけでなく、素早く正確な動作が必要になるため、最初はハードルが高いです。
ですので、最初はエンジンパワーも低く安価な車に、そのパワーでも十分すべるくらいの限界の低いタイヤをつければいいのです。
私が30年少し前に最初にドリフトを練習したのは、カリーナ・ディーゼルに中古で買ってきた86のLSDを入れ、解体屋さんから買ってきたツルツルで幅の狭いタクシータイヤをつけたものでした。これは、後で振替ってみればですが、お金がかからず、比較的簡単にドリフトでき、安全という3つの利点がある最適な選択だったと思います。もっとも今ではそもそもFRでLSDが付く車を見つけるのが簡単ではなくなってしまった。また、タクシーも太いタイヤを履くようになってしまったので、限界の低いタイヤを見つけるのは工夫が必要かもしれません。でも、探せば必ずあるはずです。
次に場所です。一番いいのは濡れたアスファルトかと思います。次に砂利でしょうか。とくかく摩擦が低い路面がいいです。
実は、上記の車と場所を私が準備して、初心者向けのドリフトスクールでもやりたいと思っています。多分1日か2日である程度できるようになるはずです。ただ、いつかと言ってもいつになるか、今のところは決まっていません。ご要望があれば早まるかもしれませんので、ご意見等、是非たくさんのコメントをお願いします。
2)練習方法
次は具体的な練習の手順についてです。以下は自分の経験を思い出して、最適だと思われる手順を書いたものです。おそらくこの手順に従えば、大抵の人は1日か2日で基礎をマスターできると思います。でも、本当にそうかどうかは、実際に複数の人に教えてみて、もっと確かなメソッドを開発していきたいと思っています。従って、今のところは大まかな記載にとどめておきます。今後、これをもっと完璧なものにしていきたいと思います。
ところで人間というのは緊張したりパニックを起こしたりすると、一つの情報の集中してしまう傾向があるようです。ドリフトは目から入ってくる情報や、ステアリングから手で感じ取る情報、耳に入ってくるスキール音、体で感じる横Gなど、さまざまな情報を感じ取って、それをアクセルやステアリングの操作につなげて行く必要があります。しかしながら、最初から冷静にこれを行なうことは難しいでしょう。おそらく、今スリップしそうだという目から入ってくる情報にびっくりして、何をしていいかわからなくなってしまう状態から始まるのではないかと思います。それでいいのです。順を追って色々な情報を処理できるようになっていきます。
①ステップ1
目標:車をオーバーステアにする(後輪を流す)ことができるようになる。
方法:普通にカーブを曲がっているときにアクセルを踏んで後輪が流れることを確認する。
コツ:普段より多少早めかなという程度にはスピードを上げる必要はあるかもしれませんが、コーナーリングが難しくなるほどのスピードを出す必要はありません。(十分に性能の低い車と、滑りやすい路面を用意しましょう。) あわてずに落ち着いてアクセルをポンと踏んで後輪がスリップすることを確認します。スリップしたらアクセルを離すだけで大丈夫です。これで車は止まります。もっともこの状態でアクセルを踏み続ける人はまずいないと思います。
②ステップ2
目標:カウンター(逆ハン)を当てられるようになる。
方法:直角コーナーを作って練習します。コーナーの途中で後輪を流しスピンしないようにカウンターステアを当てます。
コツ:最初はまず間違いなくカウンターを当てるタイミングが遅れると思います。実は目で景色の変化を追ってそれに対応しようとしても遅いのです。では、何に集中すべきかというと「ステアリングインフォメーション」です。車は滑り出すとステアリングに加わる力に変化が生じます。例えば右折するために右にステアリングを切ると、ステアリングには真っすぐになろうとして左向きの力が働きますが、後輪が滑り出すとこの左向きの力が強くなるのです。ここの状態を感じ取ってカウンターを当てます。
③ステップ3
目標:ステップ2で当てたカウンターを戻すことができるようになる。
方法:ステップ2と同じ直角コーナーを使いコーナーの途中で止まらずにコーナーを抜けていくことようにします。実はカウンターを戻すというのは意外と難しく、戻しが遅れると逆向きにスピンしたりしてしまいます。これはタイミングに慣れるまで練習が必要です。
④ステップ4
目標:定常円旋回ができりょうになる
方法:これが最大の山場、かつ初級のゴール地点です。ドリフト状態をずっとキープしながら円を描いていきます。途中流れすぎてしまったり、逆にもっと流さないとドリフトが止まってしまいそうになったりします。その時は以下の操作をします。
流れすぎてしまったとき:アクセルの量を減らしてカウンターを増やします
流れが止まりそうになったおき:アクセルの量を増やしてカウンターを戻します
ステアリングインフォメーションと視覚情報に集中しながらとにかく練習あるのみです。疲れて集中が切れそうになったら休憩しながら頑張りましょう。
⑤ステップ5
目標:限界の高い車でもドリフトができることを確認する
方法:実はステップ4をマスターできていれば、パワードリフトであれば自由にできるようになっているはずです。限界の高い車でもドリフトができることを「確認する」と言ったのはそのためです。但し、ステップ4ができるようになったといっても、安定してできるとは限らず、まだまだ失敗することを前提としないといけない状況ですので、ドリフトOKのサーキット等、場所は慎重に選ぶ必要があります。
ドリフトスクールをやるとしたら設備的なことや時間を考えるとステップ4くらいまでがワンセットになるだろうと思っています。